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Amazon Managed Blockchainの概要とブロックチェーン技術の実用例について

昨今ブロックチェーン技術の利用が急速に拡大しており、2025年度には多くの企業にブロックチェーンが普及することで市場規模は約7247.6億円に達するとの予測もあります。
そこで本稿では、ブロックチェーンとスマートコントラクトの基本的な概念から始め、Amazon Managed Blockchainの概要、そして実際ブロックチェーンがどのように活用されているのか、具体的な活用例を交えてご紹介します。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンの特徴

ブロックチェーンとは、以下の特徴を持つ分散型データベースです。

  • 記録された情報の改ざんが非常に困難
  • 耐障害性が高く、システムダウンが起きにくい
  • サービスの非中央集権化が可能

ブロックチェーンは情報をブロックという単位に記録し、鎖のように連鎖させて保存する構造を持つことから「ブロックチェーン」と呼ばれます。
それぞれのブロックは前のブロックのハッシュ値を参照しているため、1つのブロックの情報を改ざんしようとすると、後続ブロックのハッシュ値と整合性が取れなくなリます。

blockchain_consistency

またブロックチェーンは「分散型」データベースであるため、同じデータがネットワーク上の複数ノードに保存されています。
それぞれのノードはすべてのブロックを持っており、新しくブロックが追加されるたびにその情報はネットワーク上にあるすべてのノードに反映されます。
そのため、もし情報の改ざんを試みた場合ネットワーク上にあるすべてのノードを同時に操作する必要があるため、改ざんは事実上不可能とされています。
このようにそれぞれのノードが情報を共有・管理しているため、情報の信頼性・透明性が保たれるとともに、1つのノードに障害が発生した場合でもシステム全体がダウンすることはありません。

blockchain_reliability

この情報の改ざんが困難であることから、管理者がいなくても「ブロックチェーン上の情報は正しい」と言えるようになりました。
つまり、ブロックチェーンを用いることでサービスの非中央集権化が可能になりました。

blockchain_decentralized

中央集権の何が問題なのか

ブロックチェーンによってサービスの非中央集権化が可能になりましたが、そもそも中央集権の何が問題だったのでしょうか。 代表的な問題点は以下の通りです。

  • データのセキュリティとプライバシー
  • 単一障害点
  • 権力の濫用

中央集権型のシステムでは情報が一箇所に集中しているため悪意のあるユーザーによって情報の改ざんが行われるリスクが高く、障害が発生した際にはシステム全体がダウンする可能性があり、耐久性・信頼性を損なうリスクもあります。
またすべての情報と権力が管理者に集中するため、管理者の意思によっては情報の不公正な制御や利用者に対する制限などが行われる可能性もあります。
非中央集権型のブロックチェーンが注目されているのは、これら中央集権型の問題を解決することができるためです。

スマートコントラクトとは

スマートコントラクトとは、あらかじめ決めておいた条件(契約条件)が満たされた時に自動で取引が実行される仕組みのことです。
自動で契約が実行されるため、人間の介入を必要としません。
スマートコントラクトの例としては、身近なものでは自動販売機がよくあげられます。

blockchain_vendingmachine

このスマートコントラクトをブロックチェーン上に構築することで、さまざまなアプリケーションの開発が可能になりました。
そのアプリケーション(スマートコントラクト)をDApps(Decentralized Applications)と呼びます。 DAppsは以下の特徴を持ちます。

  • 透明性
    スマートコントラクトのソースコードはブロックチェーン上で公表されるため、誰でも確認することができます。
    これによりすべての取引の透明性が確保されます。
  • 不変性
    スマートコントラクトがブロックチェーン上に一度デプロイされると、そのソースコードを変更することができません。
    これにより一度定義された契約の条件は変更されることなく、信頼性が確保されます。
  • 分散性
    スマートコントラクトはブロックチェーンネットワーク全体で実行されるため、中央集権的な管理は不要になります。
  • 自動化
    スマートコントラクトは上述の通り契約を自動化するため、手動での取引が不要になります。

Amazon Managed Blockchainの概要

Amazon Managed BlockchainはAWSが提供するフルマネージド型のブロックチェーンサービスです。
ブロックチェーンを構築する場合には、手動でハードウェア・ソフトウェアのセットアップを行ったり複雑な設定や管理が必要になりますが、フルマネージド型であるAmazon Managed Blockchainを利用することでそれらを簡単に行えるようになります。
詳細については、以下公式のページを参照頂ければと思います。
AWS Managed Blockchainについて

事例紹介

DeFi

DeFiとは分散型金融の略称で、従来の金融システムをブロックチェーンを利用して再構築しようとする新たなトレンドです。
従来の金融取引では銀行などの金融機関が仲介者として機能していましたが、ブロックチェーンの非中央集権化によって仲介者が不要になり、代わりにスマートコントラクトがその役割を果たします。

Compound

Compound

出典:Compound

Compoundはブロックチェーン上に作成されたDEX(分散型取引所)で、銀行を通さずにお金の貸し借りを行うことができます。
17種類の通貨を扱っており、24時間いつでも利用可能です。
Compoundは流動性を提供する(通貨を貸し出す)ことで利息収入を得ることができ、法定通貨(円やドルなど)と比較すると年利が高く設定されています。

DAO

DAOとは分散型自律組織の略称で、組織の管理者や幹部が存在せず、ガバナンストークン(仮想通貨)という組織の意思決定権(株式会社における株式のようなもの)を所有する参加メンバーの投票によって自動的に意思決定を行う組織のことです。
メンバー個々の投票はブロックチェーン上に記録されるため不正の実行は難しく、非常に透明性の高い組織運営が特徴です。
またDAOに所属するメンバーは自身の労働体系を自身で選択でき、自身が魅力的だと考える方法での組織貢献が可能です。
つまりトップダウン(管理者・幹部からの命令)で労働を行うのではなく、ボトムアップ(メンバー個々の提案・行動)で組織を運営することができます。
メンバーには組織貢献度に応じた報酬(トークン)が支払われます。

BeetsDAO

BeetsDAO

出典:BeetsDAO

BeetsDAOは音楽に基づくNFTの買取を目的としたDAOです。
グループとして特定のNFTを購入したり、新しい音楽やアートを作成するためにアーティストに委託したりします。

NFT

NFTとは非代替性トークンの略称で、文字通り替えが効かないトークンのことです。
ブロックチェーンの「記録された情報の改ざんが非常に困難」という特徴によって、デジタルデータに固有の価値がつくようになりました。
例えばデジタルアートやライブチケット等をNFT化することでそれらの作者・所有者を特定することができます。
そのためデジタルアートの転売(二次流通)時に作者へ報酬が入る仕組みを設計したり、ライブチケットの転売を防止することも可能です。

CryptoPunks(クリプトパンクス)

CryptoPunks

出典:CryptoPunks

CryptoPunks(クリプトパンクス)は、2017年6月にLarva Labs社によってブロックチェーン上で発行されたコレクタブルNFTです。
ドット絵で描かれたデザインが特徴的で、全10,000種類のキャラクターはそれぞれ異なる容姿を持っています。

分散型ゲーム

分散型ゲーム(ブロックチェーンゲーム)ではゲーム内のアイテムやキャラクターに実際の所有権を持つことができ、仮想通貨を使用してリアルマネートレーディング(RMT)を行ったり、ゲーム内のアクティビティで収益を得ることができる「Play-to-Earn」モデルを採用しているものもあります。

Decentraland

Decentraland

出典:Decentraland

Decentralandは、「仮想現実」と「ブロックチェーン技術」の融合によって生まれた分散型ゲームです。
ゲーム内で土地(LAND)を保有することができ、その土地の上に自身のコンテンツを作ることができます。
土地を購入・売却したりなど、仮想通貨を使用した取引も可能です。

まとめ

ブロックチェーン技術は2023年8月現在多くの分野で活用されており、その影響力は今後ますます広がる見込みです。
本稿ではブロックチェーン技術の概要や実用例をご紹介しましたが、次回はAmazon Managed Blockchainを使用したブロックチェーンネットワークとスマートコントラクト実装の具体的な手順に踏み込んでいきます。