先日受験した AWS Certified Advanced Networking – Specialty (ANS-C01) の試験に合格したので、個人的に効果的と思う学習方法や試験の所感を記録しておこうと思います。
まず前提として私のAWS認定や業務経験の紹介とどのような人向けに情報共有したいかを説明します。
私は主にWebアプリケーションの開発や運用プロジェクトで、AWSサービスを使ったインフラ環境の設計・構築・運用業務を行っています。
また社内でAWSの活用を推進するための、情報共有やイベント開催、環境整備にも関わっています。
取得しているAWS認定は SAP/SAA/DOP/DVA/SOA/DBS/SCS です。
これまで取得してきたAWS認定は、業務経験と重なる分野を中心に取得してきました。
オンプレ環境がメインだったころから、主にRed Hat系のLinuxを使ったサーバーの設計・構築・運用を行っており、
ネットワーク機器をいじる経験は、Firewallのポリシー変更やルーティングの追加、スイッチのVLAN設定追加といった運用作業です。
ネットワークの設計や拠点間の接続といった経験がないまま、クラウド時代に突入し、
AWSでもWebアプリケーションに最低限必要なVPCの基本設定くらいで、Direct ConnectやVPCピアリングといった、高度なネットワークサービスの利用はしたことがありません。
ネットワーク系の知識は業務で必要になった時に都度勉強しているため、体系的にはもっていないといった感じです。
この記事では次のような人向けに情報をまとめたいと思います。
- AWS認定試験を受験したことがある
- AWS Certifiedの説明や、試験予約方法などの基本的な話は割愛します
- 高度ネットワークサービスを使ったことがないが、他の認定試験に合格する程度にサービス概要は把握している
- Direct Connect や Transit Gateway、 VPCピアリング を業務で使ったことないけどなんとかしてANSに合格したい
- 効率よく学習して合格のため知識習得をしたい
- 業務経験がない分、学習範囲が広いので時間が惜しい
さて、合格者の余裕をみせながら情報共有するなどと言っていますが、これから紹介する学習方法で合格点の750点に対して、どれくらいの得点をとれたかといえば
いや、ギリギリじゃねーか! というツッコミはあるかと思いますが、最低限合格に必要なレベルの知識を得るための情報として活用頂ければと思います。正直、自分でももう一度受験したら不合格になるかもしれないというレベル感の手ごたえとなっています。
余裕をもって合格するためのプラスアルファは各自のスタイルに合わせたアレンジを加えて合格を目指していただければと思います。
情報収集をしよう
この記事にたどり着いた人はすでに実施されているかと思いますが、まずは試験の情報収集をします。
AWS認定の公式サイトから、試験ガイドをダウンロードして一読しましょう。
また、サンプル問題もダウンロードして問題と解答解説を読んでみます。私はサンプル問題の時点でまったく歯が立たないことに恐怖し、しっかり学習しないと到底無理そうだと、危機感を募らせていました。
次に問題の出題傾向の確認や学習方針を立てるための情報収集をします。だいたい次のようなことがわかると思います。
- VPCに関わる知識が重要で、とくに Direct Connect や Transit Gateway を使ったネットワーク構成の構築については必須らしい
- 試験改定でANS-C01からは Transit Gateway の活用した構成が問われるようになったらしい
- 情報がANS-C01に対応しているかの精査が必要そう
- 問題文・選択肢の文章が長いらしい
- 読解力と時間配分の試験対策が有効らしい
- 日本語への翻訳が微妙らしい
これらの情報は実際に受験した後の感覚としても共感できるものでした。
他にも学習や試験問題解答に関するTipsが公式ブログの記事にあるので目を通しておくと、方針を立てやすいと思います。
まずは試験を予約することから試験勉強を始める
これも多くの人が言及していますし、AWS公式からも推奨されています。
直前になって希望の会場・日時で予約をとるのは困難です。過去に受験したことのある会場でコンディション調整のしやすい時間帯に試験を受けることは、パフォーマンスを発揮するのに重要な要素です。
私は受験までの猶予が半年ありましたが、試験予約をしたのが10日前だったので、9:00~の枠しか空いていないという敗北者であったことを告白しておきます。
認定取得の期限が設定されている人は、不合格になった場合、再試験可能になるまでに日数が必要であることに注意してください。その点を踏まえ、最初にまずは試験予約して席を確保してしまうことをオススメします。
私も教材が最後まで終わらなかったので、1回目の受験で合格する自信がなく、もう一度再受験可能なスケジュールで試験予約しました。
試験時間にパフォーマンスを発揮できるように準備する
私の場合は、試験の申込が遅くなり、9:00~の試験となってしまったため、1週間前から普段よりだいぶ早寝・早起きをして、試験時間中に普通に活動できるように生活しました。
また、試験時間3時間に慣らす対策を試験準備期間中に考えておいたほうがいいと思います。
3時間も集中して問題を解くことはできないので、時間配分や一息つくタイミングなど、事前にシミュレーションしておくと、いい精神状態で受験できると思います。
AWS提供のサービス資料で概要を掴む
試験ガイドから出題範囲にあるサービスの解説を、AWS提供のサービス別資料の動画を見て概要を掴みます。
あくまで概要把握なので、後述の教材で知識をスムーズに吸収するための手助けとするために使います。これらの資料だけでは合格するための知識を得ることはできないので、内容を完璧に理解するためにこれだけに時間を使いすぎる必要はありません。
私はYouTubeの再生リストを作成して、時間が空いた時にながら見で、かつ倍速再生していました。ループ再生だったので何周かしたとおもいますが、後述の教材での学習と組み合わせて、サービスの理解が強化された感じがします。
私の再生リストは以下の動画です。CloudFrontやALBについては業務でよく使っているので入れませんでした。
他にもリストに入れていないサービスもありますが、網羅性については後述の教材でカバーできますので、VPC周りの重要サービスに絞って選びました。
【AWS Black Belt Online Seminar】AWS Direct Connect
【AWS Black Belt Online Seminar】AWS Transit Gateway
「Transit Gateway Deep Dive アーキテクチャガイド」 | AWS Summit Tokyo 2019
【AWS Black Belt Online Seminar】 AWS Site-to-Site VPN
【AWS Black Belt Online Seminar】Amazon VPC
【AWS Black Belt Online Seminar】AWS Network Firewall入門
【AWS Black Belt Online Seminar】AWS NetworkFirewall 応用編1
【AWS Black Belt Online Seminar】Amazon Route 53 Resolver
【AWS Black Belt Online Seminar】Gateway Load Balancer
【AWS Black Belt Online Seminar】Elastic Load Balancing (ELB)(NLBの解説)
時期によっては最新の動画が公開されているかもしれないのでご注意ください。
自分の知識レベルと試験問題の隔たりを体感する
私は、他のAWS認定の学習では、学習効果を測るために、学習の終盤にAWSが無料提供している模擬試験を利用していました。
しかしANS-C01については、あまりにも前提となる業務知識が足りておらず、知識をインプットしきる学習時間もなさそうだったので、早い段階で模擬試験を解いてみて、合格に必要なレベルとの隔たりを確認しておき、その後の学習方針を決めることにしました。
具体的には前述のサービス別資料動画を一周したころです。
結果、自信をもって解答できる問題がほとんどなく、半分くらいしか正答できませんでした。解説を読んでも自力で解答にたどり着けそうにないくらい知識量が足りていないことを体感しました。
実務経験値を利用できない分は網羅的な学習教材を選ぶ
私は、ANS-C01の知識範囲を網羅的に学習するために、Udemyで提供されている試験対策講座を利用しました。
これまでの他のAWS認定試験の学習方法として、模擬問題をたくさん解く方法をとっていました。実践的な問題文を読むことに慣れながら、問題解説文から足りていない知識を深堀し、選択肢の誤り箇所を明確にできるレベルまでやり込むという方法です。
しかし、ANS-C01についてはすべての分野で仕様理解が足りておらず、この方法では合格レベルにたどり着くのに相当時間がかかってしまうと感じました。
とくにBGPを使って経路を伝播させるような、オンプレ拠点との接続構成や、ルーティングの優先度の問題は、ネットワーク知識が前提となります。問題を解くのにどれほどの前提知識が必要になるかを見極められない私の経験値で、この学習方法は使えませんでした。
ANS-C01の知識範囲を網羅的に学習するために利用した講座はこちらです。
[NEW] AWS Certified Advanced Networking Specialty 2023
セクションの数:24・総時間:30時間43分で、試験範囲の知識を網羅的に解説しています。問題で問われる観点を意識して解説してくれているし、ANS-C01に対応してアップデートされています。なにより、「Basics of Network performance」「Hybrid Network Basics」といったパートで、ネットワーク関連の基礎知識もカバーされています。
この講座の内容を詰め込めば合格ラインには届くと感じました。
結構なお値段ですが、Udemyは頻繁にセールがされているので、80%、90%OFFで講座を購入できるタイミングを見計らってお得に受講できると思います。
私は会社の福利厚生で、希望者にUdemy Businessのアカウントが提供される制度を使って受講しました。
私はこの講座を使った学習に切り替えたのが、学習期間の終盤となってしまったため、すべてのセクションを学習することはできませんでした。
最重要項目であり、自分の弱点である、Direct Connect や Transit Gateway、複数のVPCを接続する構成を解説しているセクションを優先して進めましたが、全体の半分くらいまでしか終わらせることができませんでした。
CloudFrontやALBなどは普段使っているサービスのため出題されても対応できたと感じましたが、受験後に改めて受講が間に合わなかったセクションを確認し、
最初からこの講座を使って最後まで終わらせていたら、もっと自信をもって試験に臨めたと思いました。
講座での学習方法のTips
英語講座を攻略する
こちらの講座は全編英語となっています。私は日本語しか理解できないので、対策が必要でした。
検索すればすぐに解決できますが、トランスクリプションを表示した状態で、ブラウザ拡張機能でサイト全体を日本語に翻訳することで、自動字幕の英語文章を日本語で追うことができます。
英語の自動字幕をさらに日本語自動翻訳しているので、綺麗な日本語の文章にならない部分が多々発生します。講座の内容を理解しやすくするために私が使った方法を紹介します。
- 英語字幕を同時に表示する
- 日本語だけだと誤訳や改行箇所で意味が繋がらないので補助として使う
- 再生速度を落とす
- 日本語の文章だけで意味を追うことはできないとあきらめて、英語の単語を耳で拾いやすくする
- 意外と講師の英語は日本人には聞き取りやすいと個人的に感じました
- Edgeブラウザの読み上げ機能をつかう
- 動画画面と日本語を同時に追うことは大変で、集中力が落ちてくるとどちらの内容も頭に入ってこない状態になる
- 変な日本語でも耳から入れることで動画画面の内容を理解するほうに意識を向けられる
- すべての動画でずっとおかしな日本語を効き続けると、それはそれで邪魔になったりするので、ON/OFF切替ながら利用する
すでにサービスの概要を把握して、AWS用語を理解できていれば、ブラウザの機能をサポートにして、スライドの内容や講師の英語の単語を拾うのは、慣れてくれば案外できると思います。
「Attached」が「添付ファイル」と訳されるのを無意識に再変換できるくらいには慣れてくるはずです。
英語の講座を受けていることは、試験問題対策として副次的な効果があります。
試験問題の日本語訳で、てにをはがどこにかかっているのかわからなかったり、選択肢の違いが判断できないようなときは、
英文から判断する必要があります。
学習からキーワードに英単語で触れていることで、なんとなく言いたいことを理解するのに役立ちます。
また、英語の講座であるため、集中して受講しなければ理解できません。もし理解が難しい場合は、休憩を入れるなどして、効率的に学習を進めることができました。
スライドの構成図を試験中にイメージできるようにする
試験の問題文ではシナリオに沿ったネットワーク構成を文章で説明されます。
業務で構成を説明するときは構成図を作成して説明すると思いますが、試験は問題ごとに構成図を書いている余裕はありません。
文章から構成図をイメージして解答する必要があるので、ある程度システマティックに構成図のパターンをイメージできるようにしておくとスムーズに問題が解けます。
講座のスライドではほとんどの構成図で構成アイコンの位置を固定してくれています。画面右側がオンプレで左側がVPC、真ん中に接続に使うサービスといったパターンです。
接続に使うサービスが変わったり、VPC側の構成が変わってもこのパターンがあまり崩れることはないので、問題文を読みながら、この構成図をイメージできると、どのパターンの接続構成を問われているのかが把握しやすいと思います。
以下のようなポイントで構成図がどう変化するかをイメージできるようになると、問題理解がしやすくなります。
- VPCがマルチAZ、マルチリージョン、マルチアカウントによって接続サービスをどう選択するか
- 接続先がオンプレなのか、VPCなのかにもよって変わる
- 要件は、高可用性なのか、コスト重視なのか
構築操作の順番についても、スライドのアニメーションや、画面操作をイメージで覚えることが、誤った選択肢を消去法で絞っていくのに役立ちました。
まとめ
以上が私がAWS Certified Advanced Networking – Specialty (ANS-C01)の受験を経験して得た感想と反省点です。
いろいろ非効率な学習をしてしまい、受験日までに講座を完了させることができなかったので、もっと早く自分のレベルを自覚して勉強方法を切り替えていればよかったと後悔しています。
この記事がAWS Certified Advanced Networking – Specialty取得を目指す人に役に立てば幸いです。