はじめに
Webアプリケーションにおいて、セッション管理はユーザー体験を左右する重要な要素です。ログイン状態やカート情報など、ユーザーごとの状態をどのように保持するかは、アーキテクチャ設計において慎重に検討すべき重要事項であり、システムのスケーラビリティや可用性にも大きく影響します。
本稿では、AWSでよく使われる2つのセッション管理手法、ALBのスティッキーセッションとRedis(ElastiCache)によるセッション管理を比較し、それぞれの特徴と使い分けについて解説します。
ALBスティッキーセッションとは?
ALB(Application Load Balancer)のスティッキーセッションは、同じユーザーからのリクエストを常に同じターゲット(EC2やECSなど)にルーティングする機能です。これはALBが発行するCookie(AWSALB)を使って実現されます。
メリット
- 設定が簡単(ターゲットグループで有効化するだけ)
- アプリ側の変更が不要
ALBのスティッキーセッションの仕組みについては過去の投稿「AWSのロードバランサーのスティッキーセッションの仕組み - Techfirm Cloud Architect Blog」をご覧ください。
デメリット
- セッション情報は各インスタンスに保持されるため、スケールアウト時に共有できない
- インスタンス障害時にセッションが失われる可能性がある
- ステートフルな構成になる
Redisセッションとは?
Redis(ElastiCache)を使ったセッション管理は、セッション情報をアプリケーションからRedisに保存する方式です。これにより、アプリケーションはステートレスになり、どのインスタンスでも同じセッション情報にアクセスできます。
Redis OSSを使うことで、キャッシュ専用のインスタンスを別途持ち、アプリケーションからそのインスタンスにセッション情報を保存・取得する構成になります。
メリット
- ステートレス構成が可能で、スケーラビリティが高い
- セッション情報を全インスタンスで共有できる
- 冗長構成やバックアップも可能
デメリット
- アプリケーション側の実装が必要(LaravelやSpring Bootなどで設定)
- Redisの可用性やセキュリティ設計が必要
比較表:ALBスティッキーセッション vs Redisセッション
| 項目 | ALBスティッキーセッション | Redisセッション |
|---|---|---|
| セッション保持場所 | 各インスタンス | Redis(ElastiCache) |
| ステートレス性 | × | 〇 |
| スケーラビリティ | △ | ◎ |
| セッション共有 | × | 〇 |
| 導入の容易さ | ◎ | △ |
| 障害耐性 | 低い | 高い(冗長構成可) |
どちらを選ぶべき?
| シナリオ | 推奨手法 |
|---|---|
| 小規模なアプリ、PoC、短期運用 | ALBスティッキーセッション |
| オートスケーリングを活用したい | Redisセッション |
| マイクロサービスやECS/Fargate構成 | Redisセッション |
| セッション共有が不要 | ALBスティッキーセッション |
まとめ
ALBのスティッキーセッションは手軽に導入できる一方で、スケーラビリティや可用性に課題があります。Redisを使ったセッション管理は、構成がやや複雑になるものの、柔軟で拡張性の高いアーキテクチャを実現できます。
アプリケーションの規模や要件に応じて、最適なセッション管理方式を選びましょう。